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(4)給餌の方法

2009/01/24

先生の研究室の弘中さんが、巣から出たベニツチカメムシが、エサを見つけた後で、まっすぐに巣の方向に戻っていくことを発見。
どのようにして真っ直ぐに戻れるのかの研究を発表したら、2005年の大学入試センター試験の問題に出題されたとのことです。

 


次のスライドはこちらです。

 

http://kanatomi.d2.r-cms.jp/topics_detail6/id=218

2005年の大学入試センター試験の生物の問題

(問題)ベニツチカメムシ(以下,カメムシという)の成虫のメスは,森の中の地面の落ち葉の下に巣をつくり産卵する。
卵が孵化(ふか)した後,自分の幼虫のための餌(えさ)(1種類のみの木の実)を歩いて採集に出かけ,熟した実を巣に歩いて持ち帰る。
巣(◎印)から出て,実を探索するとき(出巣)の軌跡は複雑であるが,実を発見した後,巣に帰るとき(帰巣)の軌跡は巣の近傍までは直線的である。
帰巣を始めたときのカメムシ15個体の歩いている向きを観察し,巣の方向を0度として10度毎(ごと)に表すと,ほとんどのカメムシが巣の方向を向いていることが分かる。 

 どのような仕組みで帰巣しているかを調べるために,巣から出て実の探索行動をしているカメムシの前に餌の実を置き帰巣を開始させた。
その直後,ダンボール板にカメムシを乗せて、他の位置まで移送して下ろした。すると,ダンボールに乗せた地点から巣のある方向に向かって一定の距離だけ歩いた後に,グルグルと巣を探し回るような軌跡を描いた)。
その一定の距離は,巣から餌を手に入れた位置までの距離とほぼ等しかった。ほとんどの個体の向きは,仮想的な巣のある方向(餌を与えた地点からみた巣の方向)に一致していた。

(1)カメムシが,直線的に帰巣する際に,その方向を決定する方法の記述として最も適当なものを,次のア~エのうちから一つ選べ。

ア 出巣時に歩行しながら付けた,道しるベフェロモンを使っている。
イ  巣にいる自分の幼虫が出しているフェロモンに誘引されている。
ウ  遠くにある手がかりを使って定位している。
エ  正の走光性によって,巣に向かって歩く。


(2)一定の距離だけ歩いたという結果に関する記述として最も適当なものを,次のア~エのうちから一つ選べ。 
 

ア 出巣の際に歩いた方向と距離から,巣と餌を発見した地点の間の直線距離を計算している。 
イ 出巣の際に歩きながら近くの景色を記憶しており,餌を発見した地点から巣に戻る際にその記憶を逆にたどって帰巣している。 
ウ 道しるベフェロモンをたどって帰巣するが,フェロモンが消失するまでが一定の距離となる。 
エ 帰巣の際に,遠くにある信号が見えなくなるまで歩けば一定の距離を歩いたことになる。

 

(3)カメムシの行動観察と移送した実験に関する記述として最も適当なものを,次のア~エのうちから一つ選べ。
 

ア 複雑に実を探索したり,帰巣したり,自分の幼虫のために餌を運んだりすることは,知能による行動である。 
イ 帰巣の際に,直線的に歩くときと,一定の距離を歩いた後に巣に入るときとで,用いる手がかりが違う。 
ウ 出巣の際に複雑な軌跡を描くのは,森の中の地面に障害物が多いからである。 
エ 餌を手に入れたときに,手に入れた場所の周囲の落ち葉を取り除くと,フェロモンによる情報が乱れるので帰巣できない。

 


 

図などがかけないので、一部文章などを変えましたが、ヒントになってしまいました。

(1)ダンボールに乗せた位置から巣のある方向に歩いたのです。実際にはその方向は巣の方向ではありません。

 (巣)          ←(こちらに向かっているときにダンボールを乗せた)


                       (?)          ←(ここで下ろしたら?までほとんど真っ直ぐにいって巣を探した)

ですから、アとイは正解ではないです。
エの「正の走行性」といような専門用語は問題文にないと思うので、受験テクニックで考えるとウが正解でしょうか。
先生の話では太陽の光線(紫外線か赤外線か忘れましたが)がてがかりのような気がしました。

(2)イとウは明らかに違いますね。エも、どこにダンボールを置いても同じ距離だけ移動するので違うでしょう。
そうすると、残ったものはア。計算しているとは思えないのですが、歩いているときに、常に巣までの直線距離がわかる仕組みになっているのでしょう。
ダンボールから下ろして歩かせたあとで、またダンボールに乗せて他の場所に移動したらどうなるでしょう。
残りの距離だけ歩くのであれば計算しているような感じでしょうが・・・。
しかも、戻るために歩いた距離はどうやって計算しているのでしょう。
私は生物学を研究しているわけではないですが、なんとなく距離ではなくて時間ではないかと思います。
どれくらい歩けは戻れるかが自然とわかるような仕組みになっているのではなういでしょうか。

(3)アは「知能による行動」が誤りでしょう。
ウは正しい記述だと思いますが、「カメムシの行動観察と移送した実験に関する記述」ではありません。巣から出るときの実験はしていません。
いわゆる「ひっかけ問題」になります。こういう問題は出すべきではありません。生物の知識があっても、問題を読む能力がないと間違えてしまいます。

共通一次試験・入試センター試験は難問・奇問をなくす目的で作られたのではないでしょうか。
エはフェロモンに関する選択肢は誤りだったので、ここでも誤りでしょう。
そうすると、残る正解はイでしょう。
イが正解だとすると「手がかり」という言葉が手がかりになって、(1)もウが正解であることがわかってしまいますね。

先生の話を伺ったためでしょうが、生物を勉強しても解けてしまいました。もっとも高校では生物を習っていました。我々の頃は文系も理系も理科は3科目習って、大学受験は2科目でした。私は工学部に進んだので物理と化学です。